認知症でも有効な遺言書が作れるですか?
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20代の相談者様からのご相談
私の祖父が遺言書を作りたいと言っています。
遺言の内容は、父を飛ばして、孫の私が土地を受け継ぐものです。
そのような遺言書でも有効に作ることはできるのでしょうか?
なお、父に兄弟はおらず、おばあちゃんもすでに亡くなっています。
【回答】行政書士さいとうあきこの見解
おじいさまが、子どもであるお父さまを一代飛び越して、お孫さまのあなたに土地を譲りたいとお考えなのですね。
そのような遺言書を作ることも可能です。
以下、順を追って説明していきましょう。
ご相談のケースでは、本来の相続人はあなたのお父さまであり、法律の規定に従って相続される場合は、すべての財産がお父さまに相続されることになります。
したがって、土地についても、お父さまに相続されるわけです。
それに対してあなたは、法律上の相続人ではないため、遺言書がない状態では、土地を受け継ぐことはできないということになります。
そこで、遺言書が必要になります。
おじいさまが、土地をあなたに譲る旨の遺言書を作られることにより、相続人でないお孫さまのあなたに対して、その土地を遺すことが可能になります。
遺言書を作成することで、法律の規定では財産を譲り受けることができない方に対しても財産を遺すことができ、おじいさまのご意思を実現させることが可能になるのです。
ただし、より問題の起こらない遺言書にするためには、以下の点に留意して作成していかなければなりません。
遺留分放棄の手続き
あなたが土地を受け継ぐ旨の遺言内容では、お父さまの遺留分(最低でももらえる相続分)を侵害している可能性があります。
そこで、おじいさまとご相談の上でお父様とお話し合いをされ、おじいさまの遺言内容で納得されるかどうかをご確認いただくことが大切です。
そのお話し合いでお父さまが納得されるようでしたら、おじいさまがご存命のうちに、お父さまに家庭裁判所にお出向きいただき、「遺留分放棄の許可」を受けておかれることをおすすめいたします。
この手続きにより、お父さまの遺留分が侵害されている場合でも、お孫さまのあなたが土地を受け継ぐ内容が問題なく実現されます。
お父さまが納得されない場合の配慮
おじいさまの遺言内容にお父さまが納得されない場合は、財産の配分割合を調整されると良いでしょう。
土地はあなたが受け継ぐとして、それ以外のたとえば預貯金等の財産があれば、それらの財産をすべてお父さまに遺す旨の内容です。
これにより、お父さまのご理解を得やすくなるかもしれません。
それでもお父さまが納得されない場合は、あなたからお父さまに金銭等を渡すなどして、お父さまの遺留分との釣り合いを取っていくこともご一考されてみてはいかがでしょうか。
今回のケースにあてはめると、あなたが土地を譲り受ける代わりに、お父さまに現金などを与えるという方法になります。
おじいさまの思いを文章に残しておく
お父さまに感情的な不満を残さないようにするために、遺言書の中に、「どうして孫に土地を譲りたいと思ったのか」について理由を書き添え、おじいさまの思いを伝えられると良いでしょう。
ただ、最終的にお父さまとの調整がどうしてもうまくいかない場合は、おじいさまに遺言内容を再検討していただくこともご一考かと思います。
公正証書遺言の形式で遺言書を作成
上記の点を考慮されることで、より問題の起こらない遺言書を作成することが可能になります。
今回のご相談内容は、遺言書を書かれることによって、おじいさまのご意思が反映されるケースになりますので、必ず、遺言書を作っていただきたいと思います。
そして、遺言書を作られる際は、より安心・確実な公正証書遺言にされることをおすすめいたします。
相続の際の手続きも、公正証書遺言なら負担が少なくなりますので、相続人にとっても公正証書遺言がおすすめです。
問題は解決しましたか?
上記の内容では解決しない場合や、「私の場合どうなるの?」と疑問をお持ちの場合は、対面相談にてご事情を詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
今お抱えのお悩みを解決し、安心できる未来を作れますよう、一生懸命考えてまいります。